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ヒル・ダニ・サシガメ・コウモリなどの巧みな吸血戦略 |
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ヒル・ダニ・サシガメ・コウモリなどの巧みな吸血戦略 [BAMSA会誌 Vol.17, No.2から抜粋・修正原稿] 吸血昆虫の代表格であるカは、ヒトに止まると口吻(こうふん)を皮膚に刺して、すばやく血管を捜して2連式ポンプを用いて血液を吸って逃げようとする。ところが、ヒトでは、血液が破れると(1)血液の凝固、(2)血小板の集合・付着による血栓の形成、(3)末梢血管の収縮などの反応が次々と起こり、血管を流れる血量は少なくなり、血液も固まってくるので、カは吸血を続けることが困難になる。そのうち、ヒトに気づかれて身の危険を感じるはめになる。そのような吸血動物側の防御反応に対してカはどのような対抗手段をもつに至ったのであろうか? そこでは何とおもしろいことに、カはアピラーゼという血小板凝集阻害活性物質や抗Ua、抗Xa因子の血液凝固阻害活性物質や血液拡張活性物質などを唾液腺の中にもっていて、吸血の際に注入して、吸血にとって不都合なヒトの防御反応を抑えて、吸血を続け、吸血時間を短縮してすばやく逃げ去るという戦略をとっていたのである。 ところが、ヤマビルやサシガメ(シャーガス病のベクター)では、1時間以上の長い時間たっぷりと吸血し、シュルツェマダニやヤマトマダニなどのマダニ類にいたっては、刺し口をセメントで固め6〜7日間吸血し続けるのである。そうすると、吸血動物側では吸血時間が長くなると、吸血の際に注入された唾液成分に対してIgEが誘導され、肥満細胞の脱顆粒により、ヒスタミンやセロトニンが血中に放出されるため、血管の透過性が高まって発赤・浮腫・痛みなどを伴った様々な炎症反応やアレルギー反応が起こり、これらのヤマビル・サシガメ・マダニ類などは吸血を続けることが難しくなる。しかしながら、彼らはカよりさらに複雑で確実な抗止血機構や抗炎症・免疫抑制物質をも創り出してきたのである。すなわち、ヤマビルでは吸血する際に分泌されるヒルジンの中に、カに見られたと同様の血液凝固阻害活性物質や血管拡張活性物質の他に、痛みを軽くする抗炎症物質やアレルギー反応などを抑える免疫抑制物質など多彩な機能をもって、吸血動物側に対抗して、長時間の吸血を可能にしている。それ故に、ヤマビルに吸血されても吸血中は痛みも腫れることも痒みもほとんど感じない。また、オオサシガメの唾液腺からプロリキシン−s−という新しい抗血液凝固活性物質が見出されている(鎮西、2000)。このプロリキシン−s−は血管内に入るとNO(一酸化窒素)を放して、筋肉を弛緩させるという一つの物質で、一方で血液が固まるのを阻止し、一方で筋肉を弛緩させて、吸血をより容易にするという驚くべき合目的性を持った物質を合成しているのである。また、マダニ類から疼痛発現物質のブラジキニンの産生を特異的に阻害する新しい抗炎症物質が見い出され、ブラジキニン産生抑制を標的とした新しい抗炎症薬・鎮痛薬の医薬開発の試みとして注目されている。 また、南アメリカに生息する吸血コウモリは、唾液中に大量のプラスミノーゲン活性化因子をもっており、この物質によって活性化されたプラスミンが口や胃の中で固まった血液を素早く溶解するので、多くの血液を短時間に飲むことができる技を身につけている。このように吸血動物たちは多彩で巧みな吸血戦略を駆使しながら毎日を生き延びていつのである。 Copyright(C)ヤマビル研究会 leech@job.tele.co.jp |