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いきものヒストリー第6話:日本のみに生き続ける動物たち

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複雑な地形と多数の固有種

日本は国土の70%近くを森林が占める世界でも有数の森林大国です。そこには豊かな自然があります。日本は小さい島国でありますが、大陸とは何度もくっついたり離れたりしながら7000近い離島から成り立っています。南北に長い日本列島には亜熱帯地域があり、そこは降水量も多く、一方で山脈も多いので標高差が著しく寒暖差も大きくなります。それゆえに地形が複雑で寒冷気候から温帯~亜熱帯気候まで多様な特徴を持っていると言えます。

世界各国の森林面積

そしてこの小さな島国の中にたくさんの固有種が生息しています。

日本は先進国では珍しく多種類の動植物が生息しています

動物ではニホンカモシカ、ヤマドリ、ライチョウ、クロウサギ、オオサンショウウオ、ヤマネ、ヒメネズミや下北半島のニホンザルなど日本の固有種は131種類にもなり、ガラパゴスの110種類よりも多いのです。なお、日本と同じ島国の英国では固有種は見当たりません。固有種の多さが全て生態系の豊かさにつながるわけではありませんが、日本は豊かな生き物の宝庫であることには変わりはありません。

また、日本の植物は5000~6000種と多種多様で、特に落葉広葉樹が多いのが特徴です。秋を迎えた時の日本の紅葉は黄色~紅色~褐色まで多彩で、世界で最も美しいと言われています。

ライチョウとヤマドリ

固有種を守った3つの要素

ここでは、動物を中心に日本の固有種について、大きく3つに分けて触れていきます。

固有種を守った3つの要素

一番目としては、小笠原諸島や西表島などの様に島が何万年も前から隔離された中で、独自に進化してきた生き物にオガサワラオオコウモリ、カラスバト、メグロ、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなどがいます。

二番目としては、太古の時代に生きていた祖先種の形状を色濃く残しながら、日本の各地に細々と生き残ったいわゆる生きた化石(遺存種 Relic speciesと言います)と称されている生き物で、ニホンカモシカ、ライチョウ、オオサンショウウオなどがあげられます。

三番目としては、現在でも日本列島の森林にごく普通に生息しているアオゲラ、セグロセキレイ、ヤマドリ、ムササビ、ヤマネ、アカネズミ、ハタネズミ、カワネズミ、ニホンウサギなどの生き物です。


島が隔離され独自に進化してきた生き物

1.島が隔離され独自に進化してきた生き物

《オガサワラ諸島》

代表的な海洋島である小笠原諸島は過去数百万年にわたって、他地域から隔離されてきたため独自の進化を遂げて、多数の固有種が生息・分布しています。樹木では112種の内、71%が固有種か固有亜種です。また、昆虫類では800種の内、31%が、陸産貝類は90種の内、94%がそれぞれ固有種です。この様なことから、2011年にユネスコの自然遺産に登録されました。

小笠原母島原生林、石門

(小笠原 母島 石門からの眺め/原生林)

メグロ

メグロ

東洋のガラパゴスと言われる東京都小笠原村母島に生息している特別天然記念物のメグロは世界中で日本にのみ生息しているメジロ科メグロ属に属する小鳥です。父島に生息していたコジマメグロはすでに絶滅しています。メグロは本来、森林の中に生息する小鳥です。

雑食性で、木の実、昆虫などを食べますが、パパイアの実は大好きなようです。ジャングルの中のこずえに巣を作り、2~4個の卵を産みます。小さい鳥は通常多くの卵を産みますが、外敵の少ない小笠原では卵を多く産まないように進化したと考えられています。
そして、メグロは島から島への移動をしませんので、島ごとに個体群の分化が進むことになります。なお、19世紀までは、メグロは小笠原唯一の"メジロ"でしたが、20世紀の初めにヒトが持ち込んだいわゆる普通のメジロが野生化し、今では小笠原の優占種になってしまいました。


《西表島》

西表島は昔、大陸と地続きで多くの動物が大陸から渡ってきましたが、その後、日本列島の中では早い時期に島となって隔離されたために、生きた化石と呼ばれる動物が今でも生き残っています。

イリオモテヤマネコ

(浦内川のアオスジアゲハの水飲み場とマングローブ林)


イリオモテヤマネコ

イリオモテヤマネコ

イリオモテヤマネコはネコ科ベンガルヤマネコ属に属する日本固有種の野生ネコで、1965年、沖縄県の西表島で発見されました。ネコ科の原始的な特徴をもっており、生きた化石と呼ばれ、国の特別天然記念動物に指定されています。

このイリオモテヤマネコは約二十万年前の氷河期にアジア大陸と陸続きだった時代に島に渡って来たベンガルヤマネコが祖先ではないかと言われています。体長50~60㎝、体重3~5㎏、体色は灰褐色、体毛はイエネコのように柔らかくはなく太い剛毛です。マングローブなどの湿地帯を生活圏とし、ネズミ、ヘビ、トカゲ、カニ、カエルなど広範囲の動物を餌としています。時には、泳いだり潜ったり魚や水鳥を捕ることもあります。

しかし、車との衝突事故や繁殖する場所の環境が変化し、現在この島に生息しているのは100頭前後に減少し、絶滅の恐れが非常に高くなっています。その豊かな食性と環境省(西表野生生物保護センター)の保護策によって何とか生きながらえてほしいと願わずにはいられません。

イリオモテヤマネコ用のトンネルカ

(道路下のイリオモテヤマネコ用横断道路)


日本の各地に細々と生き残った生きた化石と言われる生き物

2.日本の各地に細々と生き残った生きた化石と言われる生き物

ニホンカモシカ

ニホンカモシカ

ニホンカモシカ(特別天然記念物)はパンダに負けないくらい珍しい動物で、北京、ベルリン、サンデイエゴなどの動物園に友好記念に贈られています。外国人にはスノーモンキー、タヌキに次いで人気があります。氷河期時代からの生き残りで“生きた森の化石”とか“森の哲学者”とか呼ばれています。ウシの仲間で、温和でおとなしい。森を主な生息地とし、シカと違ってなわばりを持ち、母親が1-2頭の子供を連れて小グループで行動します。ニホンカモシカはヒトが近づいても逃げず何か珍しいものが来たんだろうかとじっと見つめる面白い癖があります。

昭和30年代(1955年~1960年)には全国で3000頭位しかいないと言われていましたが、現在では、かなりの増加が見られ、九州・四国・本州(中国地方には生息していない)に10万頭以上が生息しているのではないかと推定されています。


ライチョウ

ライチョウ

日本のライチョウ(特別天然記念物)は約2万年前の氷河期に、当時は陸続きだった大陸からやってきたとされ、氷河期が終わって温暖化が進むと、本州中部の2000~3000mのハイマツ・高山帯にのがれて現在まで生き延びてきた《奇跡の鳥》です。

天敵をさけるために、雷の鳴る様な空模様の時に活発に活動することが名前の由来と言われ、江戸時代から火難、カミナリよけの信仰対象としてあがめられてきました。外国では狩猟対象になっていますが、日本のライチョウは山岳信仰と結びつき、奥山に生息する『神の鳥』として大切にされてきました。

ところが、最近では天敵や捕食者が増加して大きく数を減らしています。サルやシカなどの動物が高山帯へ侵入、南アルプスではシカが高山帯の花畑を食い荒らしたり、キツネ、カラス、サルなどが高山帯に入り込み、ライチョウを捕食するようになっています。現在、ライチョウは富山・長野などの高山帯に3000羽程度生息しています。数年前に御嶽山が噴火しましたが、ライチョウは過酷な環境の中でも生き延びていました。

ライチョウは日本の多様で豊かな自然との共存を基本とする日本文化の象徴です。ヒトよりも先にこの日本の大地に住み着き、そして、日本の高山帯にまで移って生き延びてきたライチョウが絶滅することのないように守り抜いていきたいものです。


オオサンショウウオ

オオサンショウウオ

愛知、兵庫、鳥取、広島など西日本の清流に棲んでいます。3000年前から生息し、生きた化石と言われています。イクチオステガ(初期の両生類)が先祖で、国の特別天然記念物に指定されています。世界には3種のみ(日本、中国、米国)が生息しています。寿命は100年、夜行性です。前足は4本ですが、後足は5本あります。

陸上には適応できますが、水中生活が得意です(幼生時にはエラ呼吸、成体になると肺呼吸に変わります)。餌として小魚、サワガニなどを食べますが、目が発達していないので、獲物を追いかけて捕食することはまれで、ただひたすら待ち伏せて目の前に来たらガブリとかみついて食べます。

繁殖は雌が雄の巣に来て、卵(300-700個)を産みますが(卵塊)、産卵すると雌はいなくなります。雄が卵を守り世話をします。転卵と言って卵に新鮮な水や空気を送るため、雄は卵がふ化するまで離れません。

その昔シーボルトが気に入って母国に持ち帰り、51年間も生存していたそうです。

最近、京都の鴨川にチュウゴクオオサンショウウオが生息しているのが確認され、オオサンショウウオとの交雑が問題となっています。


森林に普通に生息している生き物

3.森林に普通に生息している生き物

ハタネズミとアカネズミ

ハタネズミアカネズミ

日本の森林や里山には多くの愛すべき生きものが棲んでいます。その中でも食物連鎖の底辺に位置して、森林の生物多様性を保つのに欠かせない生き物にハタネズミ、アカネズミ、ヒメネズミやエゾヤチネズミなどのネズミ類がいます。

そして、意外なことにこれらの生き物は日本にのみ見られる貴重な固有種なのです。

ハタネズミは頭部が丸く、耳や目は小さく、尾は短いのが特徴です。日当たりのよい里山近くの草原・畑などの地下にトンネルをはりめぐらせて活動しています。
一方、森林に近い場所に多く生息しているアカネズミは、耳は大きく目はパッチリしています。アカネズミの学名はApodemus speciosusと言いますが、このspeciosusは『美しい』という意味だそうです。

これらのネズミたちは野外に住んで農作物・山林に多くの害を与えていますが、一方で、種子散布という大切な働きをしています。また、食物連鎖の上位種の猛禽類やキツネなどが生きていくには欠かせない動物たちです。例えば、ハヤブサの仲 間であるチョウケンボウはハタネズミを主食としていますし、キツネは子育て期間に48匹のハタネズミを捕獲したと記されています。また、アオダイショウは4月~11月の活動期に100匹以上のネズミを食べたという記録があります。

食物連鎖の底辺で、これらネズミたちは食べられることによって日本の森林の多様性が守られて、多くの動植物が生きています。


地球

第1話 地球の絶妙な位置
第2話 地球規模の9項目-温暖化ってどういうこと?
第3話 温暖化と蚊-生息域の拡大で起こること-
第4話 生物の絶滅-かつてないほどのスピードで消えていく-
第5話 クニマス-奇跡の魚と呼ばれて-
第6話 日本列島は生き物の宝庫です-固有種がたくさん生息しています-

 

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