まず、前吸盤の仕組みを見てみましょう
ヤマビルは前吸盤の中央に口が開き、その中に下の写真のような3つの鎌状(半円形)のあご(顎)があります。
あごに各々2列の歯が60〜70個並んでいます。
吸血するときには吸血動物の血管を探し当てると、前吸盤で固定した後、口の中の鎌状のあごを上下に動かして皮膚をY字状に切って染み出る血液を吸います。歯の間には唾液腺が多数あり、吸血する際にはこの唾液腺からヒルジンが多量に分泌します。このヒルジンには皮膚を切った時の痛みを気づかせなくするモルヒネのような麻酔作用のある物質や、血液が固まるのを防いで吸血しやすくする物質、血管を広げて吸血しやすくする物質などが含まれています。
吸血試験のようす
実際にヒトへの吸血試験を行ってみると、吸血する時間はかなり長く1時間くらいはたっぷりと吸血します。吸血された時には最初チクッとする感じ程度でほとんど痛みは感じません。そして、その吸血する量はおよそ1ml(1頭当たり)です。吸血した後、流血は1〜2時間止まらず、この失血量をあわせるとヤマビルによる1回の失血量は2ml前後になります。
(写真:吸血まもないヤマビルと1時間吸血したヤマビル)
ヤマビルと医療の歴史はとても古いのです
ヤマビルを医療で利用することは、現在はありませんが、ヒル(チスイビルの一種)が医学的治療に用いられたのは古くからあります。ギリシャ時代に始まり、エジプトのピラミッド内の壁画にはヒルで病気を治療している物語が描かれています。その後19世紀始めにヨーロッパでは医用ヒルとして、高血圧、鼻出血、肥満など数多くの治療に用いられました。
1904年になると英国でチスイビルの1種である Hirudo medicinalis からヒルジンといわれる抗血液凝固物質が始めて分離されました。ヘパリンが見い出される以前にはこのヒルジンが唯一の抗血液凝固剤として使われていました。日本でも老人の足の血行障害や肩こりにヒルを吸血させたりする、いわゆる潟血(しゃけつ)療法といった伝統的な治療も少ないながら行われています。
ごく最近、大学病院の外科領域(形成外科など)で、指、耳、唇などの接合手術の後に生じるうっ血を解消し、術後の回復を早め、移植部分の微小血管を早期に回復させる目的で医療用ヒル(チスイビル:英国から輸入)がよく利用されています。
短時間の忌避(ヤマビルを寄せつけないようにする)効果は期待できます
殺ヒル効果は・・・
塩をそのままかけるとナメクジと同じで死亡します。食塩水では、濃度20%だと効果はまずまずで(死亡率80%)、大きなヤマビルでは死なないこともあります。濃度10%では効果が弱い(死亡率20%)ので注意してください。
忌避効果は・・・
市販の薬剤よりも効果の持続時間が短く、竹酢液(原液)9分、食塩水(10%)20〜30分と短時間でした。
忌避試験のようす
(1)それぞれ布の部分に忌避成分(塩水・竹酢液・ヤマビルファイター)をしみ込ませ、脱出するかを観察
(2)開始直後・・・布に触れて嫌がるヤマビル
(3)食塩水10%・・・3分後には5匹すべてが枠外に脱出
(4)ヤマビルファイター・・・60分後脱出なし。布の上で歩けなくなる
ヤマビルの活動シーズンは、4〜10月で、気温20〜25℃が最適。では、冬の寒い時期にはどうしているのでしょうか?
試しにヤマビルを(乾燥を防ぐために脱脂綿も)シャーレに入れて、冷蔵庫へ入れてみました。
寒いと死んだふり?
0℃にすると死んだようにじーっとしているけれど、20℃の室温にもどすと、歩き出します。
さらに−2℃では、4日間入れておいても死にません。凍結しないが歩行困難で動かない個体もいる。20℃の室温に戻すと翌日には呼気に反応します。しかし、−5℃では3時間では凍っても室温に戻すと生きていますが、8時間後にはコチコチに凍ってしまい、室温に戻しても復活しませんでした。
暑いとよれよれ?
30℃ではとても活動的になるのですが、35℃にしてみると8時間後までは元気ですが、24時間後には全て伸びきって死んでしまいました。さらに40℃ではぐったりとして3時間も持たず死亡してしまいました(頚部出血)。